紹介、一噌流唱歌集

一噌又六郎 1936 『一噌流唱歌集』 わんや書店

一噌流唱歌集は稽古で唱歌を引くときに重宝します。

本書は上下巻の構成で、

上巻が中之舞、男舞、神舞、盤渉舞、舞働、早笛、翔、下リ端、序之舞、鞨鼓、

下巻が大癋面、黄渉楽、神楽、神之舞、盤渉楽、盤渉序之舞、乱、獅子、

となっております。五段舞の三段オロシも載っています。

一噌流唱歌集は、わんや書店、檜書店のオンラインサイトで購入できる点も優れています。

能楽関連の優れた書籍の中には、欲しい方は古本屋巡りして下さい(^◇^;)という絶版ものが少なくないため、入手が容易な書籍は有難いですね。

さらに一噌流唱歌集は上巻の序文が秀逸です。(こちらを引用したくて紹介しました)

「笛の唱歌といふは管より音をあらはす己々が心覺へにして其の人々の意趣を述ふるのみのものなり

されば些かづゝの假名のたがひは苦しかるまじきに似たれども凢音に出るものは心を種とすることわざなれば唱歌の趣をおのづから調子にうつりて高下甲乙の味ひたがひゆけばやがて聞ゆる人の耳にはめでたしとも拙しとも聞しらるゝことなり

譬へば常の詞にも美しきはうつくしうとのべ憎きはにつくきとつめて唱れば緩急のたがひにてその言葉の勢ひきゝ分れぬるが如し

されば言語のわかちにて人の尊卑もおしはからるゝものなれば先づ唱歌より心を用ひて執行あるべきものなり」(一噌又六郎『一噌流唱歌集上巻』、1936、pp.1-2)

舞の稽古では、動もすれば唱歌はリズムが合ってれば大同小異、という感覚になり勝ちですが「先づ唱歌より心を用ひて執行あるべきものなり」、深いですね。

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