今回はトリの解説をします
流儀によってはトル地と言いますが、同じ事です
もっとも例の多いヤの間から解説します
ヤの間のトリには形式上3種類考えられます
上の句形式のトリ、下の句形式のトリ、分離のトリ
の3種類です
ヤの間のトリのほとんどが下の句形式のトリとなりますので、まずは下の句形式のトリ説明します
これまでの本地の地拍子の例示で、いずれも下の句は本地の5拍半間から始まっていました
そこで、抽象的な思考をいたしまして、本地の8拍を4拍プラス4拍と分割します
すると本地をトリ二つで分割できたことになります
このトリ二つのうち、一つ目のトリは「いろはにほへと」が大体納まり、二つ目は「ちりぬるを」が大体納まります
このうち二つ目のトリの形を下の句形式のトリと呼ぶことにします
下の句形式のトリの形を表.18に掲げます
また、本地下の句の形も比較で表.19に掲げます
いずれも文字数に着目すると、「ちりぬるを」の5文字になっていることが分かります
拍 | ヤの間 | 左手(○●) | 右手(△▲) |
1 | ○ | △ | |
ち | |||
2 | り | ▲ | |
ぬ | |||
3 | る | ○ | |
を | |||
4 | ○ | ○ |
拍 | 本地の下の句 | 左手(○●) | 右手(△▲) |
5 | ○ | ○ | |
ち | |||
6 | り | ● | |
ぬ | |||
7 | る | ○ | |
を | |||
8 | ○ | ○ |
表.18、表.19のいずれも「ちりぬるを」を4拍で処理しているという効果は同一です
下の句形式のトリの使い方ですが、上歌形式の小段の第一句、クセの第一句などが典型で、その他、詞章に5文字が連続する場合に頻出します
特に和歌の一句目に用いられることが多いです
和歌は57577であり、75の部分は本地本間で綺麗に処理できるわけですから、冒頭の5文字が孤立してしまうため、下の句形式のトリで処理するわけです
下の句形式のヤの間のトリは、サラリと謡うと習うこともあるかと思いますが、本質的には、下の句形式のトリを実質的に七五調の下の句の抜粋と捉えて、七五調の序破急として下の句はサラリと謡うために、下の句形式のトリも同様にサラリと謡う、と理解しても良いと思います