令和元年、春の関西宝連

先週の土曜日に第120回京宝連にあたる春の関西宝連を観に行きました。

京大の出番は全体によくできていました。
上回生は地謡を最後まで勤め上げたのは素晴らしかったです、謡いも大過なかったです。
下回生は作法が良くできていました。(上回生がしっかり稽古をつけてくれたのだと思います。)
舞囃子二番の出来はとても良かったと思います。
学生の講評は個々人に行ったので、その他、色々と気づいたことをメモします。

半能高砂
シテ 学生 ワキ 原隆 笛 貞光智宣 小鼓 成田奏 大鼓 渡部諭 太鼓 前川光範 後見 石黒実都、学生 地謡 学生
ワキの出は、真之次第ではなく、次第。上略打切で段を取って、脇の出。真之次第ではないので種々の型は致さず。シテ柱を過ぎるときも打切早メ頭ではなく、常の次第の通り、ヨセルツヅケ。装束は真脇能の典型である紺の袷狩衣、白大口に大臣烏帽子ではなく、茶系の縒狩衣、白大口に風折烏帽子だったと記憶。恐らく、今回の様に半能にして、ワキも赤大臣を連れずに一人で登場する場合は、装束や次第の位を落としてこのような演り方となるのでしょう。
次第のトメは真之次第であれば脇座まで行きますが、今回は常の次第なので、ヨセルツヅケのアト、ツヅケ一鎖あって常座にてフミトメ、大小鼓に向き直って、打切、句アイとなり次第謡。次第における定式の型です。打切も上略諷頭はないため、いわゆる三遍返シにはせず、拍子不合の地取りあって、大小ヲキ。ワキ名宣リあって、笠の打切となり、道行に替えて待謡となります。待謡の中に脇座へ向い、謡のトメまでに下に居となり、謡いドメ、出羽打出し。掛リのツケ頭は二ツなので、ここでも位は取っていません。また越の段もなし。出羽アト、謡い暫くあって神舞。神舞も位を落として三段寸法で舞っていました。その他、常と変わらず。
また後見の危機察知能力の高さに感服。どこまで待って、どこで立ち上がるかといったタイミングはとても勉強になりました。

続いて番外仕舞の感想。

岩船 辰巳大二郎
師の岩船を拝見するのは二、三度目。竿の型でも拝見し、拍子の強さと型の極めが印象的であった。今回もやはり型の極めがよく、三ツ廻込ミも腰が全く動かず、舞には体幹の強さが必要と実感。扇を開いてからの舞も、きびきびとして祝言味たっぷりであった。関係ないですが、拝見するたびに満次郎師の声に近づいていく気がします。。

経政キリ 澤田宏司
最近の経政キリは9年前に私が学生能を出した頃とは型が違うようです。当時は、飛び入る型は常座にて一ツ招キ、二ツメの招キ扇にて大小前を狙って行き、胸の高さ辺りの燭台の火を消す、といったイメージでした。最近は常座にて一ツ招キ乍大小前へ行き、腰より低い火を消すというイメージのような。。それはともかく、舞としては恥ずかしやの緩め方は謡いと型ともに勉強になりました。十文字切りも、烏帽子に当てない態で、割と外して切っているのが印象的でした。

杜若キリ 石黒実都
師の三番目ものは以前、松風の仕舞を拝見したときに感銘を受けましたが、今回も非常に嫋やかだった。序盤の大小前における打込ヒラキの型の連綿と謡いの合わせ方は参考になった。また、素人が謡うと大抵「すはや今こそ〜、あたりで余りますが、今回、地謡とシテの息の合わせ方が参考となった。

鞍馬天狗 山内崇生
師の鞍馬天狗は7年ほど前の京宝連で一度拝見。後座を立ち上がった瞬間には、既に鞍馬天狗の位が憑依しており、仕舞は後座から始まっているのだなということを、当時、強く印象付けられた。今回の仕舞は全く能の位で舞われており、習ったことのある学生は見所で驚いたと思う。序盤から位取りが重く、重量感のある面キリは若輩には不可能。「あらあら時節と〜、の辺りは地が警戒して僅かに緩めるシーンもあったが、シテに僅かの焦りもなく、最後まで位を貫いた。辰巳孝仕舞集に収録されている、辰巳孝先生の老練の大天狗を思い出さずにはいられない舞台であった。

玉之段 辰巳満次郎
師の玉之段は二、三度目。最近、宝生の舞台で拝見する玉之段は、ツヅケベースにキルキラズを多用して謡うことが多い印象(満次郎師ナイズ?)。型の極めが抜群なのと、序破急の急でしっかり止まれる体幹が圧倒的。満次郎師の舞台を拝見する度に、ハコビ、構ヘ、声量に驚かされます。宝生会に入部した頃に、先輩方にこの点を厳しく躾けられたものです。。。今回の玉之段で得られた気づきは「辺りに近く〜、の見廻シです。心持ちを付けずに、かなりサラリとされておりましたが、却って海人の強靭さを感じた次第。

付祝言は久しく聴いていない難波
此音楽に引かれつつ
聖人御代にまた出で
天下を守り治むる
天下を守り治むる
萬歳楽ぞめでたき
萬歳楽ぞめでたき

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