当ヤヲハはトリ以外では殆ど登場しないのが特徴です。
表の拍から謡い出しとなる間は、半声の間(第8拍謡い出し)、当ヤの間(第1拍)、ヤアの間(第2拍)、当ヤヲハの間(第3拍)の4種類が知られています。
この内、半声の間とヤアの間は、文字数と節扱いの関連において共通点があります。
例えば紅葉狩クセ「立ちわづらへる、は上の句7文字であり、(地拍子だけで考えれば)本間の謡い出しも可能です。
しかし文頭に増節を置くことによって、本間の半拍前である半声の間からの謡い出しを可能としています。
また三山キリ「御法を受くるなり、は上の句4文字であり、ヤヲの間の謡い出しも可能です。
こちらも文頭に増節を置くことによって、ヤヲの間の半拍前であるヤアの間からの謡い出しを可能としています。
当ヤにもこう言った用例があります。
籠太鼓鼓之段「やはらやはら打たうよ、(返しの方)です。上の句6文字なので一句目はヤの間ですが、返しは当ヤとなっています。文頭が増節であるためです。理屈は上記の半声の間、ヤアの間と同様です。
まとめると、半声の間とヤアの場合はそれぞれ、上の句8文字、5文字における間である一方で、文頭が増節である場合は一文字繰り下がって7文字、4文字に対応する。
また当ヤは、平ノリの場合は上の句7文字が原則ですが、文頭が増節の場合は一文字繰り下がって6文字となります。上の句6文字ということは増節の当ヤと、ヤの間とは上の句の文字数が同じということです。
同様に当ヤヲハは、ヤヲハと同じく上の句の文字数が3文字、となりそうですが、、、実際は本地において上の句3文字の当ヤヲハはほとんどありません。八島「水やそらそら、が数少ない例です(中ノリですが)。
実践的には本地の当ヤヲハは上の句2文字の場合に使われます。
次回に紹介します。