二十番目 碧霞会⑧熊坂
二十番目の感想です、優れた舞台の後に、舞台の空気が変わるというのはよくあることです
何の芸談か忘れましたが、一回、見所*の熱が冷めると熱を戻すのが難しいので、番組は最初に上手な人が舞った方が良い、と読んだこともあります
現代人的には、普通、プログラムの後半にメインの演目を持ってくる方が一般的な考えかと思いますが(トリや大トリという概念)、能の場合はそうとも限らないということですね
社中会*でも、番外仕舞*を最初に舞う場合をよく見かけますが、これも番組*の構成上の問題とは別に、最初に舞台を暖める意味で舞われているのでしょう
話をシテの花に戻しますが、熊坂の仕舞は若手の憧れの曲で、能を始めたばかりの頃に仕舞を見て、いつかは舞ってみたいと誰しも思うような、かっこいい仕舞です
リンクは掲載しませんが、youtubeの東京藝大のアカウントで宝生流の熊坂舞囃子*もあがっていますので、実際に熊坂を見てみたい方は検索してみてください
仕舞の内容としては、熊坂という大盗賊が牛若丸にこてんぱんにされる部分を演じるのですが、負けるといえども必死に奮闘しており、型は多いので面白い舞どころです
ちなみに細かい話ですが、長刀の持ち方が宝生流に準拠しています
他流は割と石突*近くまで手一杯に握るイメージですが、宝生流は石突側は余して持ちます、どれくらい余らせるかも口伝*があります
他流の方からすると、北斗君の持ち方は「なってない」と思われるかも知れませんが、宝生流的には「口伝通り」となります、大変よく取材されていて驚きです
楽屋弁当は男子高校生には少ないですね笑、確かに私も学生のときはボリュームに物足りなさを感じていた気がします、懐かしく感じました
碧霞会編の今後の展開としては、泰山師の番外仕舞、能を舞われるお弟子さん、家元のご講評*、などがありそうです
その他考察的なものですが、中国の泰山には、能にもなっている泰山府君(たいさんぷくん)のほか、碧霞元君(へきかげんくん)という天女も祀られております
泰山師の名前から碧霞元君を連想して碧霞会としていると思います
宝生流においては決まり模様の五雲から連想される、雲、風なども会の名前に使われるため、宝生流的にも霞は違和感のないところで、宝生流も踏まえたよくできた会名だと思います
シテの花から能を知った方向けの説明
見所(けんじょ) | 客席 |
社中会(しゃちゅうかい) | お弟子一門の発表会、同門会とも |
番外仕舞(ばんがいしまい) | 玄人の模範演技と思っていただければと思います。番外というのは、元来の意味は番組に記載されていないサプライズの演目、という意味だと思いますが、現在では普通に番組に記載されています。 |
番組(ばんぐみ) | 公演のプログラム |
舞囃子(まいばやし) | 能のハイライトを紋付袴でシテと地謡だけで演じるのが仕舞 ざっくりした理解としては、仕舞に囃子(楽器)が入ると舞囃子です 舞囃子の形式では、仕舞よりも長い範囲を舞います |
石突(いしづき) | 長刀を地面に突き立てた際に地面に接する部分 |
口伝(くでん) | 明文化されていない情報、文書化を怠っているのではなく、流出を避けるために口頭で伝承しています |
講評(こうひょう) | 偉い先生方から、自分の舞台の出来をレビューして頂く、ありがたい機会のこと 大体、恐怖の時間と同義 |
アイキャッチはサンデー公式の壁紙を使用させていただきました
(少年サンデー壁紙ダウンロードhttps://websunday.net/wallpaper/)