和歌といえば五七五七七ですが、能において平ノリで和歌を詠むには工夫が必要です。
能のリズムは七五調なので、完璧には和歌に対応出来ません。
和歌をよく見ると、五「七五」七七なので、「七五」の部分は本地本間の一句が対応しそうと言うのが分かります。
なのですが、、、そうすると前後に不穏な文字数が残ります。「五」と「七七」です。
実は「五」の処理は簡単で、ヤの間のトリ一つ持ってくるだけです。
ヤの間のトリで5文字を処理する例は無数にあり、特に上歌形式の小段の冒頭でよく見かけます、その他平ノリ全般に汎用されています。
ヤの間のトリは本間で謡い納るのに苦労しませんから、次句を本地本間とすれば、簡単に「五」「七五」と繋げられます。
この例では羽衣クセ「春霞、棚引きにけり、久方の〜、の謡いが分かり易いかと思います。
これは紀貫之の「春霞、棚引きにけり久方の、月の桂も花や咲くらむ」の上の句ですから、実際和歌に良く対応できていると言えます。
羽衣クセでは和歌の下の句「七七」から文句を変形して、「七五」を作っています。
しかし原文の「七七」にチャレンジすると厄介であることに気づきます。「七七」を本地本間の七五調で処理しようとすると、「月の桂も(7文字)花や咲く(5文字)、となり「らむ」が入らないのです。
頑張って入れられないこともないですが、クセの序文にあるまじき窮屈さです。
どうすれば良いでしょうか?
色々なテクニックがあるので、次回以降紹介致します。
当ヤヲハで紹介した技法(および書き漏らした当ヤヲハの技法)も追い追い紹介できるかと思います。