ぼろぼろになった和綴じの小謡本を修繕したので、謡本に用いられている四つ目綴じの方法を紹介致します。
まず、このようにボロボロになった和綴じ本は、綴じ糸をすべて引き抜きます。
とじ糸と、とじ針を用意します。ここでは、それっぽい色合いのとじ糸を用意しました。針は縫い針のように先の尖ったものよりは、とじ糸のように先の丸い方が向いていると思います。今回はNo.20の針を用いました。
目安となる糸の長さは綴じ方と本の厚みによるのですが、四つ目綴じであれば、本の対角線の2往復分あれば安宅や摂待の謡本でも十分綴じられます。今回の謡本は厚めだったので、2往復でギリギリでした。五番綴じなどは、長めの方が良いでしょう。細い糸で綴じる場合は二本取りにします、二本取りの場合は倍の長さが必要です。
では綴じて行きます。針に糸を通して、一本取りで玉結びします。まず、謡本を適当に開いて、4つの孔の内、1つの孔の近所に針を刺します。数ページまとめて貫通させます。
数ページまとめて貫通させたら、近傍の孔に切り返します。
切り返した勢いで、 写真の様に、裏表紙側に針を通してしまいます。
謡本がばらけないように、背表紙に一周巻きます。
一周して元の孔から出てきたら正解です。最初に針を刺した際の玉結びの糸が謡本からはみ出ていますが、いつでも処理できるので問題ないです。説明の目印になるので、しばし放置しておきます。
写真を参考に、次はお隣に潜らせます。左右どちらでも構いません。潜らせたら、今回も同様に背表紙に一周させます。
ただし、4つの綴じ孔のうち中央の2つは背表紙に一周させるだけですが、端の2つは、写真の様に天地も巻く必要がありますので、注意です。
天地に巻いたら、一筆書きの要領でガシガシ綴じて行きます。
一気に飛びましたが、基本的に一筆書きの要領で進んで行けば問題無いです。実際にやってみると非常に簡単です。注意点は、
(1)初めて来た孔は背表紙を巻く
(2)天地を巻くのを忘れない
一筆書きの最後に、最初の孔に戻ってきたら成功です。戻ってこなかったら、どこかを綴じ忘れています。
綴じ終わった後の糸の結び方を説明します。写真の様に、2本の糸の下に針を潜らせて、針を少しずつ送ります。
すると写真の様に糸が輪状になりますので、輪っかの中に針を通して、結び目を作ります。玉結びなどと似た要領です。
このままでは裏表紙に結び目が露出したままです。そこで写真の様に、結び目を作った孔に再び針を通します。すると結び目が謡本に埋没して、綺麗な見た目になります。
後は針を引き抜いて、表紙側に飛び出している糸を処理します。糸をできるだけピンと引っ張った状態で、表紙ギリギリの位置で糸を切ると、張力で糸が謡本に埋没するので、綺麗な見た目になります。
背表紙から飛び出ていた糸を処理して完成です。時間は慣れれば5分程度です。難しそうに見えますが、案ずるより産むが易しです。愛用の謡本の糸が解れて困っている方はぜひお試しください。