ダグラス・マレーの「西洋の自死」の最終章だけ読んでいなかったので、読了。たまには、能に関係のない話。。
著者は「現代の経済国家が大量移民を防止することは可能であること、またそれが「不可避」なプロセスではないことを日本は示した。」と過大評価していますが、本書刊行後に出入国管理法が改正されたことには呆れたのではないでしょうか。
他国の文化よりも自国の文化の方が好ましいという態度が、最も穏健な解釈でも時代遅れの無知な意見の持ち主であり、より一般的な解釈においては人種差別主義者とみなされる。そして一度、差別主義のレッテルを貼られると、たちまち失脚することとなる、という現代西欧のリベラリズムを正直に告白しています。
またレッテル貼りを恐れるゆえに「すべての文化は平等であるが、自国の文化は他の文化より劣る」とみなす態度に陥り、また他者を貶めることで相対的に自身の評価を上げるという構造は、SNSでよく見かける、人種差別主義、異文化差別主義などのレッテル貼り(本人はポリコレの守護者だと思っているパターン)をよく説明できています。
欧州が立ち直るためには、自虐史観からの脱却および、「慈悲」と「正義」との相違を政治家が理解することが必要でしょう。日本の未来そのものだな、としみじみ観念できる良書でした。