紹介、日本髪大全

田中圭子 2016 『日本髪大全』 誠文堂新光社

能から離れますが。

この本は日本髪の通史、髪に関わる文化と伝統、髪に携わる職人と工芸品、などを丁寧に取材しており、写真も豊富で解説も詳細、と正に大全に相応しい内容です。

通史としては、古墳時代の美豆良(角髪)から始まり平安室町の垂髪、白拍子、江戸後期の島田髷、大正ロマン溢れるマガレイトなどなど、豊富な図説で紹介されています。

日本髪を時系列で俯瞰すると、中世以来、自然な垂髪こそ黒髪を美しく見せる方法である、とされていたものが、出雲の阿国の登場以降、男髷を模した女性髪が発展する過程がよくわかります。

図説は古書の写しだけではなく、古髪に結ったモデルさんのカラー写真なので、イメージしやすくて助かります。そして結髪実演付き(大体20〜30ステップ、写真付き。真似できるのでしょうか?)

細かいところでは、市井の女性、上流階級、宮廷女官などなど環境に応じて収録されているため、比較するのも一興です。

近代の日本髪については、中原淳一考案の髪型などが紹介されています。こちらも結髪の実演付きです。

通史以外では、花街について、全紙幅の3分の1程度の分量があり、舞妓さんから太夫の髷まで、各種紹介されており、楽しめます。舞妓さんの花かんざしが睦月〜師走まで一本づつ写真で紹介されており、可愛らしいです。

相撲部屋の佐渡ヶ嶽部屋の琴奨菊と床山さんへのインタビューは、なかなか感動的でした。床山というのは、力士の髷を結う専門職です。

力士の髷は身体とみなされるため、髷が土俵に触れても負け!髷がばっちり決まっていると安心して取り組めるそうです。力士の頭はたんこぶだらけなので、隠してくれるのも髷の良いところとか?

そして床山は、毎日力士の髪に触っているので、髪の調子ひとつで、力士の体調や心境がわかるそうです。うーんまさに名人の芸談のようです。床山は舞台には出ないけれども、力士に最も近い存在で、まさに一心同体、能で言えば後見のようなものでしょうか。

本書はとても読みやすいので、日本髪に興味がある方は、買って損しないかと思います☺️内容はとてもマニアックです。。

NO IMAGE