三月の舞台で、京大若手OBOGで舎利の連吟を出しました。舞台に先立ち、二月に有志で泉涌寺に参拝したので、振り返りつつメモします。
泉涌寺(せんにゅうじ)は天皇家の菩提寺でしたので御寺(みてら)とも呼ばれます。舎利の謡本にもあるように十六羅漢図や、舎利殿があります。今回、今上陛下御在位三十年を記念し、舎利殿を拝することができたのは僥倖でした。
舎利殿には仏陀の犬歯が納められており、これを牙舎利(げしゃり)と称しています。舎利は無論、仏骨のことですが、牙は犬歯を意味しています。
私は歯の舎利一般を称して牙舎利と呼ぶのだと思っていましたが、犬歯だから牙なのですね。犬歯は4本しかないので、牙舎利は世界に4つしかないことになります。
舎利の中でも、特に歯の舎利は徳が高いそうです。曰く、仏の御法は口で説かれるゆえ、歯は直接、総ての説法に浴しているため、とのこと。
この牙舎利は舎利殿内陣の舎利塔内に納められ、直接拝むことはできません。この小塔を左右から守護する形で韋駄天立像、月蓋長者立像が安置されています。
今回は、在位三十年の特別展示のため、韋駄天立像を拝むことができました。ガイドさんのお話に拠ると、十年に一度しか拝見できないそうです。実は今回、韋駄天立像の正面の向きは本来とは異なるようでした。在位二十年の記念の際は本来の方向だったそうですが、今回はドラマ「いだてん」での韋駄天人気?のため、尊顔を拝しやすいように配慮されたとのことでした。
御朱印も頂きました。一冊本が迷子だったので、五冊本に頂きました。韋駄天の文字が力強いですね。御在位三十年の良い記念になりました。令和も永く続きますように。
そのほか、舎利殿内陣の天井は立派な龍が描かれており、鳴き龍と呼ばれています。特定の位置に立ち手拍子を打つと、天井と床で音が往復振動し、龍の鳴き声が聞こえるというものです。他の方が手拍子を打たれるのを傍で聞いていても、大層には聞こえなかったのですが(失礼)、、、鳴き龍スポットに立って手拍子を打つと、頭部全体が揺らされるのを感じられました。頓首。
舎利の収録されている五冊本はご覧の通り、大蛇、壇風、昭君、三笑、舎利、と素謡ではあまり見かけないラインナップです。。。実は寛政版の五冊本は、浦島、壇風、昭君、三笑、舎利となっております。面白いのは、寛政版の浦島枠に現行では大蛇が入っている点。浦島は宮増作の非現行曲ですが、真一声やクリサシクセを完備した竹生島という感じです。龍神が玉手箱をまれびとに渡すくだりは竹生島を感じさせます!このように浦島が龍神ものであり、また大蛇はヤマタノオロチなので、五冊本のこの位置は曲が代わっても龍ポジションであることには変わりないようでした。