大和木双会 第五回記念 林木双会

一昨日、稽古の都合で京都に居りましたので、幸流小鼓方林大和先生の社中会、林木双会に行って勉強して参りました。発見のあった舞台をいくつか紹介。

船弁慶
シテ:上田拓司 笛:杉信太朗 小鼓:社中 大鼓:渡部愉 太鼓:井上敬介 謡:浦田保浩 浦田保親 深野貴彦

色々と考えさせられたのは、観世の船弁慶の舞囃子です。キリの終盤で、宝生の様に長刀をステて太刀に持ち替えず、いわゆる前後之替の型で舞っているようでした。前後之替を踏襲しているのは型だけで、囃子の手や謡の緩急は常の船弁慶と同じです。
観世の仕舞や舞囃子では、宝生流で言う所の二本差しは滅多に見ません(私の不勉強もありますが、野守でしか見たことないです)。鵜之段や修羅物でも一本で舞っているので、おそらく腰に扇を差した状態では舞わないという定めなのでしょう。見栄えの問題、またはその他便宜によるものだと推察しています。
ところで船弁慶では、シテは早笛アト、地謡座から大小前へ移動する際に、宝生方では扇を腰に差して長刀を受け取りますが。観世方では扇を地謡に渡して、長刀を受け取ります。扇を渡すのは、舞囃子(仕舞)では腰に扇を差して舞わないという前述の定めを優先するためでしょう。しかしこの故に、終盤に長刀を捨ててしまうと無刀となり窮するため、最後まで長刀で舞う要請が生じます。
ここで観世の小書、前後之替では、後シテはトメまで長刀で舞い続けます。この演出は前述の作法とも抵触せず、都合が宜しいため、船弁慶の舞囃子(仕舞も?)は前後之替の型で勤めることにしているのでしょう。
ちなみに能の場合、前後之替では後シテは真ノ太刀(鞘から刃を抜けない飾り刀)を佩きます。刀を抜く必要がないためです。真ノ太刀は、宝生では杜若澤辺之舞で用います。恥ずかしながら未見ですが、西王母なども真ノ太刀かも知れません「剣を腰に下げ(渡拍子)

独調 鞍馬天狗
小鼓:辰巳紫央莉 地:辰巳孝弥 辰巳満次郎

小鼓は孝弥先生のお嬢さま!2年前に学生鑑賞能で、鞍馬天狗の地謡に入らせて頂いた時、稚児で出演されていました。当時5つだったと思うので、今年から小学生くらい。とても元気の良い小鼓で、気持ちよく、見所を圧倒!将来楽しみです。

舞囃子 安宅滝流
シテ:浦田保親 笛:左鴻泰弘 小鼓:社中 大鼓:渡部愉 謡:上田拓司 林宗一郎 深野貴彦

安宅滝流は、何度か見ていると思っていたのですが、実際に観てみると初見でした。男舞の中に流しがあったり、盤渉の地になったりと、曲節の変化も面白いのですが、「落ちて巌に響くこそ、にて「巌」で片ヒシギを吹くのがなんともおしゃれでした。

番外一調 女郎花
謡:辰巳満次郎 小鼓:林大輝

一調女郎花は謡の間の面白さ、皷のリズムの複雑さが堪能できる濃い一番でした。なお一調には限りませんが、打上アトの「邪淫の悪鬼は、のような大ノリの出だしは大鼓がいない場合、上手くコミを感じて小鼓の打下に付けて謡い出す必要があり、私にはまだ技量が届かないと感じました。満次郎先生は流石、微塵も隙を感じさせない謡でした。

居囃子 石橋
笛:森田保美 小鼓:林大和 大鼓:河村大 太鼓:前川光長 謡:大江又三郎 井上裕久 浦田保浩

石橋は先週の観世流大鼓の浴衣会に引き続き、2週連続で拝見。気持ちの良い舞台でした。2週続けて観ると、幸流小鼓と大倉流小鼓の違いが良く分かりました。(掛け声の長さ、露の拍子の粒など)
そういえば先週の会では「獅子団乱旋の舞楽の砌、をヤヲの間で謡い出していましたが、今回はヤアの間だったようです。聞き間違いでしょうか。観世は家によって種々演り方がありそうなので、あるいは両様あるのかも知れません。

会の後、満次郎先生とたまたまロビーでお会いし、京都駅までタクシーで送って頂きましたm(__)m

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